美容師が税金対策を行う理由
サラリーマン美容師としてサロンに勤務している間は固定給もしくは歩合制という場合が主です。
歩合制ならたくさんカットをすれば収入が増えますが集客はサロンが行っている場合がほとんどで月に何人のお客様をカット出来るかはサロンの集客力により大きく左右されてしまいます。
つまりサロンに勤務しているサラリーマン美容師の間は収入を思うように伸ばす事が難しい期間です。
更に追い打ちをかける様にインフレや燃料、エネルギーなどの高止まりで支出は増える一方です。
集客は、自分ではコントロール出来ない外的要因が多い為、収入を増やす事ばかり考えるのではなく支出を減らし可処分所得(自由に使えるお金)を増やす事にも目を向けていく必要があります。
フリーランス美容師の場合、カットの技術はもちろんですが集客力に大きく左右されてしまいます。
しかし可処分所得(自由に使えるお金)を増やす事に力を注ぐという点は同じです。
本記事では収入を増やす事=攻めではなく支出を減らす事=守りについて解説していきます。
上記の【可処分所得とは】を見ても分かる通り、社会保険料と税金は源泉徴収された上で可処分所得分が給料として振り込まれます。
貰う額に期待が出来ないのであれば支払う税金の額を減らすという対策が必要になります。
つまり大きく稼ぐことが難しいサラリーマン美容師にとって税金対策は有効策であり必要な対策であると言えます。
\ 集客についてのまとめ /
\ 独立までの手順 /
控除を行う事のメリット
控除とは、差し引くという意味です。
控除が適用されると、課税対象額が減ったり、税金そのものが減ったりします。
控除は、大きく「所得控除」と「税額控除」の2つに分かれます。
所得控除とは課税対象となる所得金額を減らせる制度です。
所得控除額が多ければ多いほど課税所得額が減り、課税所得額が一定以上減るときは適用される所得税率も下がり、結果として所得税も減ります。
税額控除は税額そのものを減らせる制度です。所得税を計算した後で税額控除を適用し、税額そのものが減額されます。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 | |
---|---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 | |
1,625,001円から | 1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から | 3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から | 6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から | 8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
表の右側の計算式にあてはめた時の金額分は所得から引かれ、残った金額分に課税されるという仕組みです。
つまり控除の額が大きくなればなるほど課税される対象は少なくなり結果として支払うべき税金が安くなるという事です。
美容師でも出来る税金対策【9選】
では実際に美容師でも出来る税金対策にはどの様なものがあるのか?
控除とそうでないものの両方を記載していますが全て税金対策としては有効です。
全てを挙げるとかなりの数になりますのでここでは、より実用的で利用し易い9つに絞って解説していきます。
美容師でも出来る税金対策
ふるさと納税
聞き馴染みの多い対策ですが税金対策になるの?!という方も多いのではないでしょうか?
好きな自治体に納税する事で寄付金控除が受けられます。
しかし翌年支払うべき税金をあらかじめ納めるという事で実質的な節税効果は見込めません。。
自治体から返礼品を受け取れる事でお得感がある為、どうせ税金を納めるのであれば多少手間がかかっても何かしらの対価が欲しいという方にお勧めです。
生命保険料控除
各種生命保険に加入している場合、控除を受ける事が出来ます。
もちろん、都道府県民共済へ加入している場合も控除可能です。
それぞれ控除の枠が異なりますが
・生命保険料保険・・・死亡時などに備える保険の保険料を支払った場合
・個人年金保険料控除・・・公的年金とは異なる保険会社の個人年金商品に対し保険料を支払った場合
・医療医療保険控除・・・保険会社の医療保険、介護保険に対し保険料を支払った場合
条件、控除額の上限がそれぞれに設定されていますが全て控除可能となります。
【2012年(平成24年)1月1日以降の契約の場合】
年間の支払保険料 | 所得税の控除額 |
---|---|
2万円以下 | 支払保険料全額 |
2万円超4万円以下 | 支払保険料×1/2+1万円 |
4万円超8万円以下 | 支払保険料×1/4+2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
【2011年(平成23年)12月31日以前の契約の場合】
年間の支払保険料 | 所得税の控除額 |
---|---|
2万5,000円超5万円以下 | 支払保険料×1/2+1万2,500円 |
5万円超10万円以下 | 支払保険料×1/4+2万5,000円 |
10万円超 | 一律5万円 |
地震保険料控除
納税者、または納税者と生計を一にしている配偶者やそのほかの親族が所有している居住用の建物や家財を保険の対象とする地震保険の保険料は、地震保険料控除の対象です。
※つまりお仕送りやお金を出して生活を支えている人がおり、その人が所有している不動産などに地震保険料が掛かった場合、地震保険の保険料は控除対象となるという事です。
地震保険料控除 | 年間保険料 | 控除額 |
---|---|---|
5万円以下 | 支払保険料全額 | |
5万円超 | 一律5万円 |
特定支出控除
サラリーマンでも、仕事に関連する以下の項目で自己負担が一定額を超えると、特定支出控除を受けられます。
通勤費 | 通常必要であると認められる通勤費用 |
---|---|
職務上の旅費 | 勤務する場所を離れて職務を遂行するための旅行費用のうち、通常必要と認められる経費 |
転居費 | 転勤にともなう転居のために通常必要と認められる経費 |
研修費 | 職務に必要な技術や知識をえるために受講した研修費 |
資格取得費 | 職務に必要な資格を得るための支出(2013年(平成25年)分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの取得費も特定支出の対象) |
帰宅旅費 | 単身赴任などで勤務地や居所と自宅を移動する費用のうち、通常必要と認められる支出 |
勤務必要経費 | 以下の項目については支出の合計が65万円を超える場合は、65万円が上限職務に関連する書籍・定期刊行物の購入費用(図書費)制服、事務服、作業服など着用が必要とされる衣服の購入費用(衣服費)交際費、接待費、得意先や職務上関連する者への接待、贈答、またはこれに類する行為に要した費用(交際費) |
項目を見ても分かる通りサラリーマンであれば通常は会社負担のものばかりなので利用する頻度は少ないと思いますが業務を行う上で会社負担を越えてしまった場合などに利用可能です。
NISA(少額投資非課税制度)
①のふるさと納税と同じく控除や実質的な節税効果はありません。
しかし物価高やインフレ対策として何らかの投資が必要な時代です。
大半の投資商品は運用益に対して20.315%の税率が掛かりますがNISAは国の優遇により運用益に対して課税しないという制度です。
2024年からは更に拡充し新NISAがスタートします。
- 非課税保有期間の無期限化
- 口座開設期間の恒久化
- つみたて投資枠(旧積立NISA)と、成長投資枠(旧一般NISA)の併用が可能
- 年間投資枠の拡大(つみたて投資枠:年間120万円、成長投資枠:年間240万円、合計最大年間360万円まで投資が可能。
もちろん運用で損が出てしまうリスクも伴いますし他の投資商品と損益通算出来ない点や損を翌年に繰越出来ないなどデメリットもあります。
確定拠出年金(個人型iDeCo、企業型DC)
確定拠出年金は老後の資産形成を目的とした制度です。自分で掛金と金融機関を選んで加入します。
毎月積み立てながら、自分で選んだ運用商品を60歳まで運用していく制度です。
確定拠出年金には個人型(iDeCo)と企業型DCがあります。
個人型(iDeCo)は自分の老後のために自分で掛け金を拠出し運用する制度で、企業型DCは会社が任意で用意する退職金制度の一つです。
それぞれ掛金に上限がありますが掛金分は全額所得控除となりますし運用益分にも税金が掛からず非課税となるお得な制度です。
また、積立てた額を受け取る際にも一定額の非課税枠があり税制優遇されています。
ただし、老後の資金確保を目的としていますので60歳まで引き出しが出来ないというデメリットもあり加入には注意が必要です。
▼ | 個人型(iDeCo) | 企業型 |
---|---|---|
加入 | 任意 | 会社が退職金制度として導入している場合に加入 |
掛金 | 自分で掛金を拠出する | 会社から掛金が拠出される |
金融機関 | 自分で金融機関を選択可能 | 会社が選択する金融機関 |
運用できる商品 | 金融機関で用意している商品から選ぶ | 会社が用意した商品から選ぶ |
扶養控除
子や親など控除対象の扶養親族がいる場合は所得控除を受けられます。
控除対象の扶養親族に該当する人の範囲は、以下の要件にすべて該当する人です。
- その年の12月31日の時点で16歳以上である事
- 配偶者以外の親族である事
- 納税者と生計を一にしている事
- 年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は103万円以下)であること
- 青色申告者の事業専従者としてその年、給料を受け取っていない事または、白色申告者の事業専従者でない事
すべて該当の場合、という事で想定されるケースとしては大学生の子供を抱えている、や高齢の親と同居している場合などと限られてきますが知っておいて損のない控除です。
区分 | 要件(※1) | 控除額 |
---|---|---|
一般の控除対象扶養親族 | 16歳以上 | 38万円 |
特定扶養親族 | 19歳から23歳未満 | 63万円 |
老人扶養親族 | 70歳以上で同居老親等以外の者 | 48万円 |
70歳以上で同居老親等の者 | 58万円 |
医療費控除
納税者がその年の1月1日から12月31日の間に自分または、自分と生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費が一定額を超える場合、所得控除の対象となります。
【医療費控除額の計算方法】
- 医療費控除額(上限200万円)= 医療費 - 民間保険の保険金額 - 10万円
- 総所得金額が200万円以下の場合、10万円ではなく総所得金額の5%が控除されます。
※控除対象の医療費には、出産費用や入院費用なども含めることができます。
未払いの医療費があるときは、実際に支払った年の医療費控除となるので注意が必要です。
【医療費控除の医療費に含まれるおもな項目】
- 医師、歯科医師による診療・治療の対価(健康診断の費用や医師への謝礼などは対象外)
- 治療、療養に必要な医薬品の購入費用(ビタミン剤などの健康増進に用いるものは対象外)
- あん摩マッサージ、はり師、きゅう師などの施術の対価(体調を整えるなど治療と直接関係ないものは対象外)
- 医師などによる診療や治療を受けるために直接必要な義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯など
健康面から考えると高額な医療費の支払いは決して良いことではないですが家族なども含めて医療費をたくさん支払ったという場合には確定申告で医療費控除を受けるべきです。
住宅ローン控除
マイホームの購入、リフォームのために住宅ローンを利用し要件を満たした場合に所得税と住民税の一部が控除される制度です。
年間で最大40万円、最長で約10年間、年末残高の1%を所得税や住民税から控除できます。
【住宅ローン控除の要件】
- 住宅ローンを利用して購入する物件の床面積が50平米以上
- 借入金の返済期間が10年以上
- 住宅ローンを利用する人の年収が3,000万円以下
居住開始時期 | ~2014年(平成26年)3月 | 2014年(平成26年)4月から2021年(令和3年)12月 | 2019年(令和元年)10月から2022年(令和4年) 12月(消費税10%で取得した場合) |
---|---|---|---|
控除期間 | 10年 | 10年 | 13年 |
控除率 | 1% | 1% | 1% |
最大控除額 | 2,000万円×1%×10年=最大200万円 | 4,000万円×1%×10年=最大400万円 | 【1年目から10年目】4,000万円×1%×10年=最大400万円 |
【11年目から13年目】(※3) | |||
住民税からの控除上限額 | 9万7,500円/年 | 13万6,500円/年 | 13万6,500円/年 |
(前年度課税所得×5%) | (前年度課税所得×7%) | (前年度課税所得×7%) |
細かい条件がありますが賃貸物件に住んでいる人は受けられない条件なのでマイホーム購入された方は絶対に利用した方が良い控除です。